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O Mさん 81歳 女性
【基本症病名】舌痛症 口腔内違和感、痒疹、亜鉛欠乏症、DM、逆流性食道炎。
【初診】2021.09.06.
【既往歴】2015~DMで、高血圧で薬、2020.06 肺Caで手術。下腿の痙攣:漢方薬。
2020.12.20 味覚障害、Zn:57, ポラプレジンク2T の投与を受けたことがある。最近では舌痛もあり、3M前から今日まで、プロマックの連日投与をされているのだが、良くならない。舌痛症は難治で、なかなか良くならない。我慢しなければと言われているとのこと。
【主訴・現病歴】
2020.12~味覚障害、舌痛症、痒疹 持病に対しての多剤服用がある。
現在も、味覚障害は味覚がはっきりしない、舌ザラザラ、口内が朝苦い感じ。キムチは駄目だ。
舌痛は刺激があるものを食べるとチクチク、舌前方の痛み。ただ、睡眠時は舌痛なし。
<医療・薬剤関係> ブラバスタチン、タケキャブ、ネシーナ、ニフェジピン、漢方薬。ポラプレジンク
舌に肉眼的異常所見なし。
<食事関係> 偏食等、食事特に変わりなく、食欲あり。
【治療経過】
2021.09.06 80歳の女性で、高血圧、高脂血症、DM等々の疾病を持ち、味覚障害や口腔内違和感を合わせ訴えるいわゆる舌痛症患者である。かかり付け医により、血清亜鉛値を測定されていたが2021.05.30【現代日本の国民病 亜鉛欠乏症】の発刊を信濃毎日新聞の記事で知ってから、プロマック2T/分2の基準の亜鉛補充療法が、改めて、初診時まで3ケ月間施行されているが、効果が見えないので、どうなのか?心配とのことで、受診した症例である。
問診から患者とかかり付け医のDr.Yとの関係はたいへん良好と考えられたので、現状ではこれまでの治療を継続していただいて、当診療所では亜鉛補充療法の経過を追跡して、意見を述べることとして先ず全身の状態と亜鉛欠乏状態の検討を行うこととした。
血算。血液生化学、血清亜鉛値の測定をした。
<Zn:74 Al-P:> 一般検査には治療を受けている疾患の特別のことなし。
2021.09.15 これまでの諸疾患治療と亜鉛補充の多剤服用を続けるが、3ケ月間の標準的亜鉛の処方では効果がハッキリしないので試みにプロマックD75 2T/夕1回服用に変更をお願いした。
2021.10.20 服用法を変更して、なんとなく痛みがなくなった。口内の苦みも言われてみるとない。キムチを試みに食べてみて。
<Zn:76 Al-P:127>
2021.11.17 舌痛は治まっている。口内の苦みもない。2020.11.02 の(Dr.Y測定) Zn:57であった。
かかり付け医での亜鉛補充療法前の血清亜鉛値は明かに低値で、その後の経過を含めて、典型的な亜鉛欠乏による舌痛症であり、キッと高脂血症のスタチンはじめ薬剤による亜鉛欠乏症である可能性が最も考えられる。
<Zn:88 Al-P:130>
2021.12.20 1W前ごろ、2~3日ほど舌、歯肉に痛いことがあったが治癒した。口内の荒れの感じはまだある。苦味はない。
<Zn:80 Al-P:123>
2022.01.16舌痛と口腔内の苦みよいが、舌の荒れや乾きは、まだ気になる。患者の一番の苦痛は軽快したが、血清亜鉛値の動きも、症状も、まだ、根抜けになったとは言えない。今後亜鉛不足を生じた原因疑いのある薬剤の検討を進めるべく、主治医にお願いの連絡をした。
<Zn:88 Al-P:121>
2022.02.21 一番の原因と考えるスタチンから、DrYにより、一時中止の試みが開始された。
<Zn:93 Al-P:115>
【コメント】
①多剤服用と言うよりは典型的な吸収障害やキレート作成の可能性のある数種の薬剤を服用してる典型的な味覚障害と舌痛症の患者さんである。亜鉛不足を生ずる作用の強弱は別として、殆んどの医師や薬剤師は勿論、薬学者達も考えてもいなかった多くの薬剤があるらしいことをここでは表明しておきたいと思う。近日中に一部別稿でまとめる予定。
②かかりつけ医の理解,協力が必要で、その意味では多剤服用で、多医療機関受診者の亜鉛欠乏症の治療は難治である。このことは舌痛症に限らず、他の欠乏症、例えば、褥瘡においても難治であると考え得る。
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